[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

スワーン酸化 Swern Oxidation

[スポンサーリンク]

概要

ジメチルスルホキシド(DMSO)-塩化オキサリル系によるアルコールの酸化。

DCC(Pfitzner-Moffatt酸化)、TFAA(Swern変法)、無水酢酸(Albright-Goldmann酸化)、SO3-ピリジン(Parrikh-Doering酸化)などもDMSOの活性化剤として用いられるが、塩化オキサリル法は副反応が起こりにくい点で優れている。TFAAを用いる方法は活性が非常に高いが、副反応もやや多めとなる。

試薬由来の副産物が低沸点で除去容易であり、大量スケールでのアルデヒド合成によく用いられる。 ただし、当量のジメチルスルフィドが生成するため、その悪臭が問題となる。

基本文献

開発の歴史

Daniel Swern (1916-1982)

 

米国の化学者Daniel Swern(テンプル大学)により開発された反応。

反応機構

DMSOと塩化オキザリルが反応して、クロロスルホニウム塩が生じ、これが酸化活性種として働く。この活性種は水に弱く、また-60℃で速やかに分解する。このため、本反応は低温(-78℃)・無水条件で行う必要がある。また有毒気体(CO)および悪臭(Me2S)を発するため、ドラフト内での作業が要請される。このため、実験操作・手順の煩雑さがやや欠点である。
ol-al-6.gif

副反応としてもっとも有名なものはメチルチオメチルエーテル化(MTM化)である。高温で反応を行うとクロロスルホニウム塩がPummerer転位を起こしたものがアルコールと反応し、MTM保護された生成物が得られる。
swern_3.gif

反応例

  • 穏和な条件下で進行し、不安定なアルデヒドの合成にも使える。数ある酸化反応の中でも、最も頻用される一つであり、あらゆる適用例が見うけられる。以下に一例((+)-Thiazinotrienomycin
    Eの合成[1])を示す。
    swern_4.gif
  • TFAA条件の例[2]
    swern_5.gif

実験手順

swern_6.gif
塩化オキザリル(2.1mL, 24mmol)のジクロロメタン溶液(30mL)を-78℃に冷却し、ジメチルスルホキシド(3.3mL, 21mmol)のジクロロメタン溶液(32mL)を滴下する。激しいガスの発生が見られる。5分後、アルコール(4.0g, 20mmol)のジクロロメタン溶液(26mL)を加え、-78℃で15分撹拌する。トリエチルアミン(14.0mL, 100mmol)を一度に加え、-78℃で10分間撹拌した後、徐々に室温に昇温させる。ジクロロメタンで希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液、食塩水(x2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後溶媒をドラフト内で減圧留去(悪臭のため)し、フラッシュカラムクロマトグラフィ(石油エーテル/酢酸エチル=9/1)で精製。目的のアルデヒドを無色液体として得る(3.88g, 収率96%)。[3]

実験のコツ・テクニック

※溶媒は通常ジクロロメタンを用いる。THF・ジエチルエーテルも使用可能。
※特に精密さを必要としない限り、基質:塩化オキサリル:DMSO:トリエチルアミン=1:2:3:6 のモル比で行うのがスタンダード。
※ジメチルスルフィド由来の悪臭が問題なので、全ての操作はドラフト内で行うこと。使用後のガラス器具は次亜塩素酸水溶液(bleach)に浸すことで、悪臭を除くことが可能。

参考文献

  1. Smith, A. B., III; Wan, Z. J. J. Org. Chem. 200065, 3738. DOI: 10.1021/jo991958j
  2. Braish, T. F.; Saddler, J. C.; Fuchs, P. L. J. Org. Chem. 1988, 53, 3647. DOI: 10.1021/jo00251a001
  3. Taillier, C.; Gille, B.; Bellosta, V.; Cossy, J. J. Org. Chem. 2005, 70, 2097. DOI: 10.1021/jo048115z

関連反応

関連書籍

関連リンク

関連記事

  1. ピナコール転位 Pinacol Rearrangement
  2. ポロノフスキー開裂 Polonovski Fragmentati…
  3. ペタシス・フェリエ転位 Petasis-Ferrier Rear…
  4. ハリース オゾン分解 Harries Ozonolysis
  5. アセタール還元によるエーテル合成 Ether Synthesis…
  6. オレフィンメタセシス Olefin Metathesis
  7. 菅沢反応 Sugasawa Reaction
  8. ロゼムンド・リンドセー ポルフィリン合成 Rothemund-L…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 忍者はお茶から毒をつくったのか
  2. アスピリンの合成実験 〜はじめての化学合成〜
  3. つり革に つかまりアセる ワキ汗の夏
  4. 肩こりにはラベンダーを
  5. Pythonで気軽に化学・化学工学
  6. マンニッヒ反応 Mannich Reaction
  7. 第9回慶應有機化学若手シンポジウム
  8. 始めよう!3Dプリンターを使った実験器具DIY:準備・お手軽プリント編
  9. 水素化リチウムアルミニウム Lithium Alminum Hydride (LAH)
  10. ポンコツ博士の海外奮闘録 〜ポスドク失職・海外オファー編〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

超塩基に匹敵する強塩基性をもつチタン酸バリウム酸窒化物の合成

第604回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 元素戦略MDX研究センターの宮﨑 雅義(みやざぎ…

ニキビ治療薬の成分が発がん性物質に変化?検査会社が注意喚起

2024年3月7日、ブルームバーグ・ニュース及び Yahoo! ニュースに以下の…

ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル ―高性能透明断熱材として期待―

第603回のスポットライトリサーチは、ティエムファクトリ株式会社の上岡 良太(うえおか りょうた)さ…

有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年3月号がオンライン公開されています。…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。第一弾・第二弾につづいて…

ペロブスカイト太陽電池の学理と技術: カーボンニュートラルを担う国産グリーンテクノロジー (CSJカレントレビュー: 48)

(さらに…)…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part2

前回の第一弾に続いて第二弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業との…

CIPイノベーション共創プログラム「世界に躍進する創薬・バイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第104春季年会(2024)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界に躍進…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1

今年も始まりました日本化学会春季年会。対面で復活して2年めですね。今年は…

マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-

開催日:2024/03/21 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP